大連載 金井球のエッセイ「スーパー・スキップ・午前中」
#06 1たち
さいきんのハイライト・キャベツは500円になったけど、カット野菜の値段は変わらないのなんでだろうね、と友だちがつぶやいて、量が変わってんじゃない?とパッといえたのかっこよかった。本当のことはなにもわからないし、調べる気もないんだけど。キャベツ一玉500円。1日に必要な野菜の量350グラム。2001年生まれの23歳。2人姉妹の姉。15分の仮眠で頭の中が整理されるわけがないといつもおもいます。世界は数字でできている!好きな数字は2と8です。
きれいごと。なんとなく、数字にとらわれない自分でなくちゃいけない気がする。数字はただの記号なんだから、と思ってる人の方に憧れる、ゆたかな気がする。値段で買うな、値段で迷うなら買え!とか数字に踊らされるな!とか。こんなに数字で溢れているのに!わたしも、お金に興味ないです、いいねがいくつとかに興味ないです。と心から思っているつもりだけど、きれいごとでしょうか。
今回のテーマは、「数字」。080からはじまる番号とキャベツの値段と今日戦争でしんだ人が何人かをおんなじ記号が表すことを、へんに思います。数字。いっこいっこの重さが、ひとによっても場合によっても全然ちがうくせに、世界で一番正しいみたいな扱われ方をしているのでむかつく!わかりやすくて正しいときいているのに。イメージと実際のギャップだけでいえば、わたしの方が信用されるべきだろくらいに思います。お金ないときにもらう10000円より、お金あるときに貰う10000円のほうがうれしいのなんでなんだろう。10000円分のうれしさが決まってないのキモい。納得いかない!ただの記号と思いたい数字、思える数字、思いたくない数字があるのがキモい!
大好きな数字があります。それは、わたしを好きな人の数(好きなのかな?と思っていい人の数)。フォロワー数がただの記号、とはとても思えない!ただの記号じゃなくて、わたしを見つけた人生たちの集合、そんな人生たちが今まで関わってきたまたたくさんの人生たちを想像するとウッとなります。恐ろしい……。
自分でやってる通販の、封筒に宛名を書く作業がすごくすきです。フォロワー数として普段括られている人々の名前と住所を書いてると、ひとりひとりの、重みのある人生と向き合った気分になります。数じゃなくなったひとりひとりを想像します。靴紐を結び直すために道の脇にしゃがむ背中とか。それも想像に過ぎないから、いつか全員に会って、人生をきいてみたいです。心から数じゃないあなたたち。1人1人。
1って数じゃない感じする。このパソコンとか、ペットボトル、わたしも。1です。これを読んでいるあなたも。かけがえない1、いざ数えられたら、かんたんに括られてしまう、わたしたち1。キャベツの値段。
2025.1.23 am9:00
金井 球 Kanai Kyuu
produce by Mixus Agency
#6 題材「数字」